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GID(FTM&MTF)の方の戸籍変更のポイントと手続き

GIDの方への戸籍変更のハードルは非常に高いものです。ここでは、その流れや、手続きについてのお話しはしっかりといたしますが、それ以外にも、松浦・堀川それぞれの想いを散りばめてありますので、そちらもお読みいただきながら、戸籍変更や各手術について考えてみてください。

(1)戸籍変更の要件(流れとポイント)
(2)戸籍変更の手続き(家庭裁判所)

戸籍変更の要件~何が必要になるの?

(1)二人以上の医師により、GIDであることが診断されていること
(2)20歳以上であること
(3)現に婚姻をしていないこと
(4)現に未成年の子がいないこと
(5)生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
(6)他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

法律は、上記、(1)~(6)の要件を満たすことを条件に、GIDの方の戸籍変更を認めてはいます。ただ、実際は、

FTMの方:(5)が完了した時点で戸籍変更が可能
MTFの方:(6)まで必要

ということになります。
この違いはおそらく外見上の点からだとは思いますが、ただもしそういった理由で(6)が必要ないとされるのであれば、絶対的必要事項ではないのですから、個人的には無くすべきのように感じます。話しがそれてしまいましたが、FTMの方の場合には、(6)については、家庭裁判所での参与員との面接の際に「何故ペニスの形成をしていないのか」と聞かれて来る質問に対して(戸籍変更は家裁にて手続きをいたします)。

  • ホルモン注射で性器が肥大化している
  • その証明を担当医に書いて貰える準備もある
  • 自分と同じ手術で申し立てる方が大半であり、それで許可を得ているケースは多い
  • 同じ日に同じ手術を受けた友人は既に許可が下りている
  • 下の形成までされる方はごくわずかである
  • 技術の面、時間、金銭でも負担が多く、既に子供を産む機能を完全に失い、これ以上を求めることは酷であるという司法官の判断があるのが現状。担当医からもその旨プッシュされている

などを、質疑応答してゆくことで、許可がおりるようです。事実、生殖器が無い状態(子宮摘出)で留めておき、形成まではせずに戸籍変更をしている方はおられます。

※ なんか曖昧だな・・、とお感じになっておられるかと思いますが、それは、この戸籍変更については、各家庭裁判所での判断に裁量といいますか、ブレがあるわけですね。よって「あっちは、これだ大丈夫だったと聞いている・・」というような、お話しもでてくるわけです。

一方、MTFの方は、

  1. 睾丸摘出及び精管結紮
  2. 陰茎切除と陰茎海綿体除去
  3. 陰茎海綿体と尿道を用いて尿道形成
  4. 陰茎皮膚を用いて小陰唇および膣壁形成
  5. 陰嚢皮膚を用いて膣壁形成 と大陰唇形成
  6. S字結腸による膣形成

といったステップとなり、

実際に手術を行う場合には、

  1. SRS 1 (ペニス反転法)
  2. SRS 2 (陰茎+陰嚢皮膚移植)
  3. SRS 3 (S字結腸膣形成術)

となり、ほとんどの方は(B)のやり方で行われています。
戸籍変更まで考えますと、FTMの方のようにステップの途中でよいということにはならず、最後まで実施するということになります。

松浦コメントGIDの方の中には、手術まで望んでいるわけではない方もいるわけですから、この要件は厳しいと言わざるをえず、国としてももう少し議論をしてゆく必要があると感じます。このままであれば、手術を望んでおらずとも、戸籍変更のために、やむを得ず・・、という方もおられるでしょう。
いずれにしても、戸籍変更の要件については、もう少し選択肢、幅をもたせるべきではないでしょうか。確かに、簡単に戸籍変更を認めてしまえば、何らかの不法行為も考えられますし、リスクがないこともありません。けれど、これらのリスクは、たとえばカウンセリングのハードルを上げて、“○○と答えればGIDの診断がくだる”というような状況を回避するなどで、クリアできるのではないでしょうか。

堀川コメント医療の進展はもちろん望んでおりますが、今規定とされている法律に関しては、SRSまで行わなくても、戸籍を変更することが可能となれば、色んな面で当事者の負担は軽くなるのかなと思います。もちろん気軽にできるとなれば、それこそ考えたくはないことですが、犯罪などの方向にも繋がってしまう恐れもありますので、この規定に関して、ある程度納得しているというのが正直な気持ちです。また、そこまでやるとなれば、費用・時間・労力・身体のリスクもあるわけですから、当時者も覚悟が必要となってくるので、気軽な気持ちではない、ということの証にもなると思います。
そう思うとやはり、「戸籍」の変更を行うということは、それだけの責任や、苦悩がつきまとうのは、当事者側も理解しておかなければならないことだと思います。中には、子どもを授かる為に、結婚する為に、手段として戸籍変更を行われる方も多くおられるので、戸籍変更に対して何か求めるというよりかは、「結婚」というものに対しての見直しをした方が良いのかなと思うところもあります。
この問題(結婚というものの考え方)が解決してゆけば、GIDだけの問題ではなくセクシャルマイノリティ全般の問題に繋がって来ることになるのかなとも思っております。誰しもが、1度の人生で2つの性別を味わうということは、例え本人が望んでいなくとも、そう経験できることではないだけに、多数派が指示する社会では、理解するということはそう容易なことではありません。
通常であればしなくてもよい苦労なのかもしれませんが、その中で自分にとって最善の方法を見つけ、どう生きることが一番好ましいのかを追求していけるのだと個人的には思っております。
※この意見に関しましては、かなり意見が割れてくると思います。上で松浦が話していることと、僕のこのコメントでも、幾つかの違いがありますから。いずれにしても、同じように悩みを抱えている方々に対しても、決して治療や戸籍変更を薦めている訳ではなく、あくまでも自分自身が生きていく上で、どうすることが最善の方法なのかという葛藤の仲で、こんな手段があるというご紹介をしているに過ぎません。ですから、僕の意見を、鵜呑みにされる必要は一切ありませんし、正解でも何でもありません。
ただ、このサイトを見ていただいている方々にとって、何かの励みや自分らしく生きるにあたっての力になれればという想いの元、書かせていただいているわけです。

■ 家庭裁判所での戸籍変更の手続き

申立て先などについては、以下、家庭裁判所のサイトをお読みになっていただければお分かりになるかと思いますが、少し補足しますね。

・ 家庭裁判所:性別の取り扱い変更について
※ 概要・記載例・申立手続き書類のダウンロードなど

“申立てに必要な書類”に、申立人の出生時から現在までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)とありますね。これは、言葉通り、生まれてから現在まで、転籍などをしていれば、その過去のもの全てを取り寄せてください、ということです。
つまり、戸籍変更の要件、の(2)~(4)を、立証するためのもので、20歳を過ぎているか、結婚はしていないか、子どもはいないか、もしくは成人しているか・・、というところを確認するためのものです。
他の家裁での手続きといえば、“戸籍上の名の変更”もありますが、こちらは本件のような要件は必要ありませんから、現在の戸籍謄本だけでよいわけです。

なお、診断書に関しては、以下、厚生労働省のサイトから、医師に書いていただく診断書などがダウンロード可能です。これらも家裁への提出書類となります。

□ 診断書

参考:
・ 厚生労働省:診断書例など

※ 診断書及び診断書記載例(国内外で治療を受けた者に関わる例)など

2人以上の医師が連名で診断書を作成することもできるようですが、そうでない場合には、医師それぞれに、診断書の全項目につき記載をしていただく必要があるようです。なお、手術は国内に限定はされておらず、海外でも可能です。これにより、何らかの差別的扱いを受けることはありません。

纏めますね。

□ 申し立て先 : 審判を求める方の住所地管轄の家庭裁判所

□ 申立人 : 本人

□ 必要書類

  1. 申立書
  2. 戸籍謄本など(出生時から現在までのもの)
  3. 住民票
  4. 診断書 ※ 外国語記載のものがあれば、書面提出時には必ず翻訳書を添付してください。
  5. 申立事情説明書

□ 申立て費用 : 収入印紙 800円分 ・ 80円切手10枚
※ 家裁により変わることもありますので、ご自身の申し立て先の家裁へ確認をされてください。なお、多すぎても、足りなくても、連絡をいただけます。

□ その他 : 申立事情説明書

これだけは、家裁のサイトからはダウンロードできないようです。いずれにしても、重要な手続きですので、一度家裁へゆかれて、手続き方法についてお聞きになられるとよいですよ。なお、家裁や、事情によっては、ここで説明をしている以外にも、提出を要求される書面もあるようです。

これらをそえて家裁へ提出します。不備のない場合でも、調査官、裁判官と面接があることも多いようです。ただ、性別変更はこれだけ要件がはっきりとしていて厳格なので、要件が整っているのに、変更は駄目、ということは基本的に考えられませんから、安心してゆかれてください。
ちなみにではありますが、性別変更は役所の手続きも全て家裁がすることになりますので、ご自身は役所に手続きにゆかれる必要はありませんよ(名の変更の場合には、審判書をもって、役所で手続きをします)。

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